ナチュラル・アプローチによる英語教育方法
皆さん、こんにちは。この記事では「ナチュラル・アプローチ」という英語教育方法についてお話しします。
ナチュラル・アプローチは、子供が母語を学ぶ自然なプロセスを模倣した方法であり、特に若い学習者に効果的です。
この講義では、ナチュラル・アプローチの基本的な概念と、その利点・欠点、そして家庭での応用方法について詳しく説明します。
ナチュラル・アプローチの大きな特徴は以下の3つです:
- 自然な言語習得:子供が母語を学ぶのと同じように、第二言語を自然な環境で学ぶことを重視します。
- 低ストレス環境:学習者の不安やストレスを軽減し、リラックスした状態で言語を習得できるようにします。
- コミュニケーション重視:文法の暗記やテストよりも、実際のコミュニケーション能力の向上を目指します。
これらの特徴が、ナチュラル・アプローチを特に子供に適した方法としています。今日の講義では、具体的にどのようにこのアプローチが機能するのか、また、家庭でどのように活用できるのかについて詳しくご説明いたします。
ナチュラル・アプローチの紹介
ナチュラル・アプローチは、1980年代にStephen KrashenとTracy Terrellによって開発されました。このアプローチは、伝統的な言語教育方法とは異なり、言語習得の自然なプロセスを模倣することを目的としています。Krashenは、言語習得に関する複数の仮説を提唱しており、その中でも「インプット仮説」がこのアプローチの中心となっています。
インプット仮説
インプット仮説は、理解可能な入力(コンプレンシブル・インプット)が言語習得において最も重要であると説いています。具体的には、学習者が理解できる範囲の少し上のレベルの言語を提供することが、効果的な習得を促進するとされています。これにより、学習者は自然な形で言語を吸収し、徐々にレベルを上げていくことができます。
情意フィルター仮説
また、Krashenは「情意フィルター仮説」も提唱しています。これは、学習者の不安やストレスが低い状態であることが、効果的な言語習得に必要であるという考え方です。ナチュラル・アプローチでは、リラックスした学習環境を作り出すことが重視されます。
日本の通常の教育方法との違い
日本の英語教育は、主に文法翻訳法やオーディオリンガル法に依存しています。これらの方法は、文法規則の暗記や、パターンドリル(反復練習)を通じた言語習得を重視しています。これに対して、ナチュラル・アプローチは次の点で大きく異なります:
文法翻訳法との違い
文法翻訳法は、文法規則の理解と翻訳を重視します。この方法では、学習者は文法と語彙を暗記し、それを使って文章を翻訳することが求められます。しかし、このアプローチでは、実際のコミュニケーション能力が十分に育成されないことが多いです。
オーディオリンガル法との違い
オーディオリンガル法は、言語のパターンを反復練習することで習得を目指します。この方法では、文型やフレーズを何度も繰り返し発音することで、言語のパターンを覚えることが重要視されます。ナチュラル・アプローチは、これとは異なり、理解可能なコンテクストの中で自然に言語を学ぶことを目指します。
ナチュラル・アプローチの基礎
ナチュラル・アプローチの基礎は、Krashenの理論に基づいており、特にインプット仮説と情意フィルター仮説が中心となっています。
インプット仮説と理解可能な入力
インプット仮説は、言語学習において理解可能な入力が最も重要であると主張しています。この仮説の主要なポイントは以下の通りです:
- 理解可能な入力(i+1):学習者の現在の言語レベル(i)に対して、少し上のレベル(i+1)の内容が効果的です。例えば、少し難しいが理解できる会話や文章を提供します。
- 自然な吸収:言語は意識的に覚えるのではなく、理解可能な入力を繰り返し受けることで自然に習得されます。これにより、学習者は無理なく言語を身につけます。
情意フィルターの影響
情意フィルター仮説は、学習者の感情や心理状態が言語学習に大きな影響を与えると考えます。この仮説の要点は:
- リラックスした環境:学習者が安心して学べる環境を提供することで、言語習得が促進されます。不安やストレスが高いと、学習が妨げられます。
- 楽しい学習:学習者が楽しんで取り組める活動やコンテンツを使用することが重要です。例えば、興味のあるテーマの動画やアクティビティを取り入れることで、学習効果が高まります。
ナチュラル・アプローチはこれらの仮説を統合し、自然な環境でストレスなく言語を習得できるようにデザインされています。
効果の根拠
ナチュラル・アプローチの効果は、多くの研究によって証明されています。例えば、アメリカの移民子供たちがこの方法で英語を学んだ結果、短期間で高いコミュニケーション能力を身につけた例があります。また、ナチュラル・アプローチを採用したクラスでは、学習者の満足度が高く、学習意欲も向上することが報告されています。
利点・強み
ナチュラル・アプローチには多くの利点があります:
自然な言語習得
ナチュラル・アプローチは、子供が母語を学ぶ自然なプロセスを模倣しています。これにより、学習者は言語を自然に習得しやすくなります。
ストレスフリーな学習環境
情意フィルター仮説に基づき、学習者がリラックスした状態で学べる環境を提供します。これにより、学習者はエラーを恐れずに言語を使用することができます。
コミュニケーション能力の向上
ナチュラル・アプローチは、実際のコミュニケーションを重視します。これにより、学習者は実際に使える言語能力を身につけることができます。
欠点・弱み
ナチュラル・アプローチにもいくつかの弱点があります:
文法知識の不足
このアプローチでは、文法の明示的な指導が少ないため、学習者が文法規則を十分に理解できないことがあります。
学習速度の個人差
学習者のペースに合わせた学習が求められるため、全体の進度が遅くなることがあります。特に大人数のクラスでは、個々の学習進度に対応するのが難しいです。
話す機会の限界
ナチュラル・アプローチでは、理解可能な入力が重視されるため、学習者が積極的に話す機会が少なくなることがあります。
相互関係にある他の教育方法
ナチュラル・アプローチは、他の教育方法と組み合わせることでさらに効果を発揮します:
タスクベースト・ランゲージ・ティーチング(TBLT)
タスクベースト・ランゲージ・ティーチングは、実際のタスクを通じて言語を学ぶ方法です。ナチュラル・アプローチと組み合わせることで、実践的な言語能力を養うことができます。
コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT)
コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチングは、コミュニケーションを中心とした言語教育法です。ナチュラル・アプローチと組み合わせることで、より効果的なコミュニケーション能力を身につけることができます。
インプット強化活動
インプットを強化するためのアクティビティを取り入れることで、ナチュラル・アプローチの効果を高めることができます。例えば、ストーリーテリングやリスニングアクティビティが有効です。
家庭内学習に応用する方法
家庭でナチュラル・アプローチを応用するには、以下の方法が有効です:
家庭でできる具体的なアクティビティ
- 絵本の読み聞かせ:英語の絵本を読み聞かせることで、子供が自然に新しい語彙を学ぶことができます。
- 英語のアニメや映画を一緒に見る:子供が興味を持つアニメや映画を英語で見ることで、楽しく言語に触れることができます。
保護者の役割
保護者は、子供がリラックスして英語を学べる環境を提供することが重要です。例えば、エラーを恐れずに英語を話す機会を作ることが大切です。
リソースの活用
インターネット上には、ナチュラル・アプローチに基づいた多くのリソースがあります。例えば、オンラインの英語学習プラットフォームやアプリを利用することで、家庭学習を支援することができます。
よくあるトラブルと対処法
ナチュラル・アプローチを家庭で実践する際に直面する可能性のある問題とその対処法は以下の通りです:
モチベーションの低下
子供が英語学習に対して興味を失った場合、興味を引く活動を選ぶことが重要です。例えば、子供が好きなテーマの絵本やアニメを選ぶと良いでしょう。
学習の停滞
学習が停滞した場合、新しいチャレンジを取り入れることが効果的です。例えば、新しいアクティビティやゲームを取り入れることで、学習に変化を持たせることができます。
保護者と子供間のコミュニケーション
保護者と子供の間でコミュニケーションがうまくいかない場合、リラックスした雰囲気でのコミュニケーションを心がけることが重要です。例えば、一緒に楽しい時間を過ごしながら、自然に英語を取り入れることが効果的です。
まとめ
- ナチュラル・アプローチは、母語を学ぶように第二言語を自然に習得する方法です。
- インプット仮説と情意フィルター仮説が基礎になっています。
- 日本の伝統的な教育方法とは異なり、コミュニケーション能力の向上を重視します。
- 自然な言語習得、低ストレス環境、コミュニケーション重視が主な利点です。
- 文法知識の不足や学習速度の個人差が欠点として挙げられます。
- 家庭での応用には、絵本の読み聞かせや英語のアニメ・映画が有効です。
ご覧いただきありがとうございました!お子様の英語学習が楽しく充実したものになるようお手伝いできれば幸いです。